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大連市京劇団団長 楊 赤さん yang chi

大連市京劇団団長 楊 赤さん yang chi
「国同士の難しい問題を超えて、中日文化交流が盛んになることを願っています」

「国同士の難しい問題を超えて、中日文化交流が盛んになることを願っています」

 中国の〝国劇〟として根強い人気を誇る京劇。中国各地に劇団があり、それぞれが地域に根ざした活動を続けているが、大連市京劇団はその中でも実力、伝統ともに全国屈指の京劇団だ。日本とも関係の深い同京劇団の楊赤団長に最近の活動などについて聞いた。

 中国の祝賀行事にふさわしい京劇。この元旦から春節にかけてお忙しかったことでしょう。

 京劇は中国を代表する伝統文化だけに、中国人にとって深い想いがあり、愛好者がたくさんいます。特に春節は「春節晩会」に出演したほか、各テレビ局に出演したり、パーティーのイベントで披露したり、とにかく忙しい毎日を送りました。春節明けは、人民代表大会や政協会議の両会に出席するなど、京劇以外でも日程がびっしり入ってしまいました。

 春節ゆっくりできなかったのでしょうか。

 忙しい中にも、春節の「初一」から3日間は完全オフでした。日ごろは忙しくて家族とふれ合うことができないので、88歳の母親や家族みんなでのんびり過ごしました。とても良い春節となりました。

 京劇は中国の伝統文化ですが、日本人にもファンが多いですね。

 ええ、大連で暮らしている日本人のファン倶楽部「麒麟会」があり、麒麟舞台での公演を観劇していただいてきました。それから、日本の安倍晋三首相夫人の明恵さんも京劇ファンで、個人的に大連に来られ、一緒に食事をさせていただいたこともあります。最初の内閣の時ですから、6、7年前のことになりますね。

 日本の歌舞伎との共通点も多いと思いますが、いかがでしょうか。

 私も歌舞伎を観たことがあり、中日文化の共通点が多いことに驚きました。それぞれ歴史を題材にしたストーリーで構成され、化粧や立ち回りもよく似ていると思います。互いの国家的な伝統文化として、大事にしなければなりません。

 しかし、京劇を観る日本人が少なくなったと聞いていますが。

 ええ、その傾向があります。目立って少なくなってきたのはここ1、2年のことでしょうか。麒麟舞台の公演がある土曜日には、日本人のお客さんが多かったのですが、観光客が激減したこともあって麒麟舞台での公演ができなくなり、寂しい状況が続いています。

 そうですか、麒麟舞台の公演は中断しているのですか。

 麒麟舞台は元々、日本の東本願寺であり、日本人向けの舞台として公演を続けてきました。しかし、麒麟舞台での公演が成り立たなくなり、いまは宏済大舞台をメイン舞台として毎週土曜日を中心とした公演を行っています。麒麟舞台は狭くて古くなっていますので、この休止期間を利用して改装工事を行い、5月ごろに再開できればと思っています。

 京劇にも日中間の政治問題が影を落としているのでしょうか。

 残念ながら関係があるかも知れませんね。日本人の観客数が減ったのは政治問題が起きたここ数年来です。文化と政治は関係がないのに、交流自体が少なくなっているのは悲しいことです。

 ところで楊団長は、世界各国、地域で公演されています。日本でも何回も公演されていますね。

 随分前から毎年のように日本を訪れています。昨年10月にも東京へ行って、文化を通した民間交流について話し合って来ました。しかし、公演したのは2003年の東京芸術劇場が最後で、その後は全くありません。招聘されればすぐにでも行きたいのですが……。

 最後に今後の抱負をお聞かせください。

 京劇の魅力を多くのみなさんに知っていただくため、今年中にも京劇の映画を作成することにしています。そして、国同士の難しい問題を超えて、中日文化交流が盛んになることを願っています。

【経歴】

 1961年、大連市生まれ。大連芸術学校京劇科卒。袁世海ら京劇界重鎮の薫陶を受け、京劇俳優としての才能を伸ばす。1984年に大連市京劇団に入団。現在は団長のほか、中国戯劇協会遼寧分会副主席、大連市戯劇家協会主席、中国民主促進会会員などを務める。袁派優秀専人、国家京劇一級演員。

【取材を終えて】
存在感ある一流役者

 私も京劇ファンで、麒麟舞台に通ったこともあった。台詞は分からないものの、迫力ある生演奏に合わせて立ち回る役者の所作に、心をときめかせたものだった。その憧れの役者の一人が楊赤さん。存在感のある俳優として深く印象に残っていた。
 今回のインタビューでも、そのイメージは舞台上で観たものと同じだった。きりっとした眼差し、明確な中国語での受け答え。一流の役者らしい姿がそこにあった。「政治と文化は別。日本との交流を深めたい」。楊さんの凛々しい舞台を日本で観てみたい、と思わずにはいられない。

猪瀬 和道

この投稿は 2014年3月6日 木曜日 8:08 PM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

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掲載日: 2014-03-06
更新日: 2014-03-12
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