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在瀋陽日本国総領事館 総領事 大澤 勉さん osawa tsutomu

在瀋陽日本国総領事館 総領事 大澤 勉さん osawa tsutomu
在瀋陽日本国総領事館 総領事 大澤 勉さん osawa tsutomu

「東北3省から日中関係を改善して行くのが、私の抱負。そのためには様々な分野の交流を」

 在瀋陽日本国総領事館の大澤勉総領事が今年8月に赴任した。いわゆる外務省のチャイナスクール出身で、中国関係の専門家でありながら、アメリカ、ヨーロッパにも勤務した国際派。管轄地には北朝鮮が隣接しており、また、日中関係がぎくしゃくして微妙な局面にあるだけに、大澤総領事の手腕に期待がかかる。
 大澤総領事が今年8月、瀋陽に赴任されて以来、3か月経ちました。どのような印象をおもちでしょうか。

 香港総領事館に2000年から2年間勤務しましたが、中国大陸は在中国大使館に勤務して以来、23年ぶりです。この間、中国は大きく変化しましたね。当時の中山服(人民服)を着て自転車に乗っていたのが、日本人と変わらぬ服装となり、車の渋滞もひどくなりました。さらには高級ショッピングセンターが増え、高層ビルが林立するなど、外観は見違えるほど。しかし、変わらない部分もあることを発見しました。公共エチケットは日本と違いますが、バスの車内では年配者や乳児連れの乗客に席を譲る傾向が、日本より高いですね。ある意味で感動しています。

 管轄の東北3省に対してはどのような印象でしょうか。

 前任地(ウィーン)で瀋陽への転任あいさつをすると、日本人の多くのみなさんから「実は親が旧満州育ちです」「親戚が満鉄に勤めていました」といった反応が返ってきました。ふだんよく話をしていた人から、初めてそんな話を聞き、改めて日本と旧満州のつながりの深さを思い知らされました。また、旧満州時代の建物が残り、日本語人材がたくさんいることにも驚いています。同僚たちの意見を含めて、この東北3省は中国の中で最も親日的な土地柄だと思います。

 大連についてはいかがでしょうか。

 着任後、すでに2回出張しました。大連日本人学校も訪れましたが、校舎から望む景観が素晴らしく、南フランスを思い出しました。景色だけでなく、気候も瀋陽より暖かいし、日本食料理店も多く、日本食材も豊富です。日本人にとって住みやすく、大連がうらやましいとつくづく思いました。12月7日には大連日本商工会の忘年会に出席する予定で、大連のみなさんにお会いできるのを、とても楽しみにしています。

 北朝鮮と接する総領事館としての役割をお聞かせください。

 私自身、外務省で朝鮮半島を担当する北東アジア課やソウルの日本大使館に勤務したことがあり、朝鮮半島の事情は比較的詳しい方だと思います。また、総領事館には朝鮮語の専門家も複数配置されており、このことをみても当館が、北朝鮮に関する業務をいかに重視しているか、ご理解いただけることと思います。

 前任地のウィーン勤務の3年間は、国際的な事件も多くてご苦労されたのでは。

 とにかく忙しかったですね。ウィーンはIAEA(国際原子力機関)をはじめ、9国際機関が本部を置く国連都市です。私は次席大使で、天野之弥さんが事務局長を務めていたIAEA関連業務を支援したほか、UNIDO(国連工業開発機関)やUNODC(国連薬物犯罪事務所)、UNOOSA(国連宇宙部)、WA(ワッセナーアレンジメント)、HCOC(弾道ミサイル)などを担当しました。東日本大震災と福島第一原発事故をはじめ、イランの核開発、北朝鮮の核実験、ミサイル発射問題など、とにかく忙殺されました。

 欧州での勤務を終え、ご専門とも言える中国での業務がスタートしました。総領事館の果たす役割について、どのようにお考えでしょうか。

 最大の役割は、在留邦人の保護と日系企業に対する支援です。着任後、中国側関係者に会う度に、在留邦人の安全確保について申し入れをしてきました。また、10月には遼寧省の陳政高省長、瀋陽市の陳海波市長とそれぞれ会見した時、日系企業が抱える問題の善処を申し入れました。初対面の表敬訪問では、友好をうたい上げる儀礼的なあいさつが多いそうですが、私の申し入れが実務型総領事として受け止められたようです。しかし、直訴後、関係当局が動き出すなど、ある程度の効果はあったようです。

 最後に総領事としての抱負をお聞かせください。

 この東北3省から日中関係を改善して行くのが、私の抱負です。そのためには経済など様々な分野の交流を発展させることが大切だと思います。日系企業の中国進出に対する熱い期待を感じますが、珠江デルタや長江デルタの時代は過ぎたのではないでしょうか。これからの投資は東北3省を考えるべきであり、私自身、力を尽くして行きたいと思います。

【経歴】

 名古屋市まれ。1979年4 月、東京大学経済学部を卒業して外務省入省。大臣官房などを経て、在香港日本国総領事館首席領事、在大韓民国日本国大使館公使、外務省儀典総括官などを歴任。2007年8月に在ヒューストン日本国総領事館総領事、2010年10月に在ウィーン国際機関日本政府代表部大使に就任、今年8月に瀋陽へ着任した。

取材を終えての見出し

緩急兼ね合わせたエース

 中国関係のエースが登板してきた。大澤勉総領事はグローバルな広い視野で中国、北朝鮮を見つめ、問題に取り組んできた外務省の〝中国関係プロパー〟。ウィーンでも持ち前の中国語力で中国代表と渡り合い、親交も深めてきたという。
 しかし、豪速球だけが持ち味ではなさそうだ。「週末は公用車でなく、地下鉄や路線バスを利用しています」と、一般市民感覚で中国社会と接する。緩急兼ね合わせた投球術で、難しい状況をリードしていただきたい、と願う。

猪瀬 和道

この投稿は 2013年12月5日 木曜日 12:13 PM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

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掲載日: 2013-12-05
更新日: 2014-02-13
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