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大連日本商工会理事長 丸紅(大連)貿易有限公司総経理 杉原 益雄さん Sugihara masuo

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「商工会が地域への社会貢献をすることで、潤滑油的な役目ができるのではないかと思っています」

 4月19日に開催された大連日本商工会の定時総会で、前期に続いて杉原益雄さんが理事長に再任された。大連の会員数は800社を超え、上海に次ぐ2番目の大所帯。しかも長年の懸案事項に加え、日中関係は微妙な状況にあり、課題、問題は少なくない。こうした中でどのようにリーダーシップを発揮するのか、杉原さんにインタビューした。
 前期に続いて理事長の続投が決まりました。今期もご苦労様です。商工会理事長の続投は2008、2009年度の黒田篤さん以来で、珍しいですね。

 理事長は基本的に1期1年の任期となっています。私は昨年度の当初は副理事長でしたが、理事長の増井正弘さんがご病気になられたため、昨年10月に理事長に就任しました。ですから2期連続というより、1年半の任期となります。

 それにしても大連日本商工会は大きな懸案事項を抱えています。そのひとつが商工会の法人化。現状はどうなっているのでしょうか。

 結論から言うと、凍結状態です。商工会の企画調査委員会を中心に、上海商工会の事例を研究するなど準備を進めて来ました。しかし、中国当局からの指示、指導がなく、待っているというのが実情です。しかし、法人化を実現できなければ、非公式の団体のままであり、銀行口座が開設できず、雇用もできません。今期は中国側に対して能動的に働きかけていきたいと思っています。

 もうひとつの懸案は、商工会が運営する日本人学校の移転問題。進捗状況はいかがでしょうか。

 こちらも移転委員会を中心に計画を進めています。移転先の新校舎は今期中に工事が完成し、引き渡しされることになっています。来年4月にはいよいよ開校の運びとなり、ハード面では着々と進んでいます。しかし、ソフト面といいますか、クリアしなければならない問題も多くあります。例えばスクールバスをどのように運営、運行させるのか、設備、備品の調達についてもどうして行くのか、検討材料は山積みです。これについても学校、保護者とのコミュニケーションを深めることが大切だと考えています。

 大連には日本人会がないだけに、商工会は経済分野だけでなく、日本人の交流組織としての役割も持っているようにも思います。この点についてはいかがでしょうか。

 大連に住んでいる日本人は、領事館への登録レベルで約6000人と言われています。しかし、商工会に加盟しているのは約800社で、会員外の日本人は数多くいらっしゃいます。会員外の方と接触することは現難しいのですが、商工会として活動などに参加してコミュニケーションを深めることは可能です。そのひとつが、大連留学生社団が主催する「MA-TSU-RI」。昨年はボランティアとしてお手伝いしましたが、今年6月のイベントでは、お金も人も出して協賛する方向で検討しています。

 日中関係は昨年来、微妙な関係になっています。商工会としてどのようなスタンスで中国側と接していくのでしょうか。

 昨年秋以来、政治だけでなく、経済でも両国の関係が冷え込んでしまいました。政治と経済は切っても切り離せない関係であることを、改めて認識させてくれました。しかし、商工会として地域への社会貢献をすることで、潤滑油的な役目ができるのではないかと思っています。昨年の事業で行った各大学への日本関係図書の寄贈もそのひとつ。さらに、私の考えですが、日系企業へ中国人学生のインターンシップ受け入れも実現したいですね。相互理解と人材育成にもつながります。商工会が音頭をとって、保険などの受け入れのためのガイドラインを作ることができたら、と思います。

 最後に中国にある日本商工会との交流についてお聞かせください。

 中国国内約40か所に日本商工会があり、1年に1回の会合を開いたり、個々の商工会で交流したりしています。コミュニケーションルートはある程度、出来上がっているのです。今後は大連にある韓国、米国の商工会と連絡を取り合い、この地で抱えている問題を共有し、解決への道を探りたいと思っています。
 
【経歴】
 1958年、大分市生まれ。大阪外国語大学中国語学科卒業。丸紅に入社後、主に通信インフラの構築、運用業務を手がけて来た。これまで北京や広州、ロンドン、アムステルダムなどの海外に勤務し、2010年4月に大連へ赴任した。大連商工会理事長のほか、大連大分県人会会長も務めている。

【取材を終えて】
夢を感じ取るしなやかさ
 商社マンとして世界各地で勤務してきた杉原さん。その国際派が「大連は素晴らしい地域」と絶賛する。趣味の釣りを楽しめる環境だけでなく、この街に日本人の夢を感じ取っている。
 「統治した問題もあるだろうが、それだけではなかったはず」。それは小説「坂の上の雲」に描かれた「夢を描いた街づくり」だという。路面電車に電気、ガスなどのインフラも整備され、ライフラインの貢献も地元の人たちの穏やかな対日感情につながっている、とみている。
 持ち前のしなやかな感性で、リーダーシップを発揮していただきたいと願っている。
猪瀬 和道

この投稿は 2013年5月6日 月曜日 3:32 PM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

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掲載日: 2013-05-06
更新日: 2013-05-08
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