Whenever誌面コンテンツ

日本貿易振興機構大連事務所 経済信息部部長 森 詩織さん mori shiori

日本貿易振興機構大連事務所 経済信息部部長 森 詩織さん mori shiori
森 詩織さん

「所得水準の向上に加えて消費スタイルも変化し、海外のモノやサービスを受け入れる人が確実に増えています」

 日本貿易振興機構大連事務所が大連の消費市場についてまとめたビジネスガイドブック「大連スタイル」を発刊した。最新のマーケット情報を分かりやすくまとめたもので、大連の商圏や暮らしが分かりやすく紹介されている。その編集責任者となったのが森詩織さん。「大連スタイル」の狙いや現在の消費動向などについて聞いた。(関連記事33 ページ)

 「大連スタイル」が発刊されました。内容もデザインも素晴らしい出来映えですね。

 ありがとうございます。大連事務所では2年前に「瀋陽スタイル」を発刊しましたが、日本企業の方からは、「大連で商品を売りたいのだが、消費市場の状況を教えて欲しい」といった相談が多く寄せられていました。そこで、大連への進出を目指す日本企業の皆様に、最初に手に取っていただけるビジネスガイドブックを作ろうと、昨年11月から取り組んできました。

 短期間でこのガイドブックを作り上げたのは驚きです。

 大連事務所は10人のスタッフがいますが、荒畑稔所長をはじめとする全員が汗を書きながら調査、執筆しました。このガイドブックが日本から訪れる企業様のFSの一助となれば嬉しいです。大連の人々のリアルな生活の一面を垣間見ることもできますので、お住まいの日本人の皆様にもご覧いただけたら光栄です。ご感想、ご指摘も楽しみにお待ちしています。

 「大連スタイル」の発刊主旨は、大連の消費市場を取り巻く最新情報の紹介にあると思いますが、大連の経済状況は激しく変化していますね。

 ここ2年ほどで日系企業を取り巻く環境は急激に変化しています。その原因には円安や人件費の高騰などが挙げられ、安価な人件費に頼ったメーカーや輸出型企業は厳しい状況になっています。一方で、最近の進出事例をみると、サービス業や国内販売を目的とした製造業が存在感を増しています。大連に進出する外資企業は第三次産業が多くなる傾向にあり、遼寧省がまとめた昨年の外資系企業の進出件数は、サービス業が833件、製造業106件でした。

 サービス業で注目されるのは、どんな部門でしょうか。

 介護福祉関係がそのひとつでしょう。「大連スタイル」でも2ページを割いて介護福祉のマーケットを紹介しました。介護福祉は大連市政府も介護産業の育成に乗り出しています。そこで介護福祉の先進国である日本企業への期待が高まっているのです。介護保険の未整備などの課題はありますが、日本の強みを生かせるこの分野は有望です。すでに日系の進出事例も数件出てきています。

 ところで、森さんは北京で小学、高校時代を過ごされましたが……。

 父が記者をしていましたので、仕事の関係で一緒に中国へ来て、小学校は日本人学校、中学3年生から国際学校に通学していました。しかし、中国の文化、暮らしぶりを深く知りたいと思い、高校は現地校に入りました。生徒1000人の中で外国人は私1人。軽い気持ちで入ったのですが、はじめは黒板の例題や文章の書き写しも間に合わず、苦労しました。それでも、中国人の同級生にもまれながら楽しく高校生活を過ごし、親友もできました。中国で育ち、生かされてきたからこそ、今の私があるのだと思います。

 それだけに森さんの中国に対する思いは深いことでしょう。

 そうです。高校生の時に、仕事で中国に戻ってくると、自分に誓いました。それには日本の大学で勉強して知識を身につけることが大切だと思ったのです。大学卒業後は、日本貿易振興機構に入り、念願の中国関係の部署に就くこともでき、仕事に充実感を感じています。

 中国を理解する森さんから、中国マーケット進出を目指す日本企業へのメッセージをお願いします。

 今年は地下鉄の開通や新しい商業施設の登場で、改めて大連の市場が注目されようとしています。所得水準の向上に加えて、消費スタイルも変化しています。この2、3年は輸入食品店やピザショップ、カフェなどが急増しているように、海外のモノやサービスを受け入れる人が確実に増えています。こうした流れをビジネスチャンスと捉え、進出を考える企業様も少なくありませんが、進出前には事業の可能性について、ぜひ慎重にご検討いただければと思います。進出後に様々な問題に直面される企業様もいらっしゃいます。ジェトロでご相談も受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。

  日本贸易振兴机构大连事务所发行了针对大连的消费市场归纳总结的商务指南书《大连Sty le》。我们向编辑森诗织女士询问了制作《大连Sty le》的目的和消费动向等内容。
  “想在大连销售商品,希望可以告诉我消费市场的情况’我们总会接待像这样来咨询的访客。针对这些想要进军大连的日本企业,我们从去年11月就着手收集资料,希望制作一本通俗易懂的大连商务指南书。如果因此能助从日本远道而来的企业者们一臂之力的话,我们将倍感荣幸”

【経歴】
 島根県松江市生まれ。小学、高校時代を北京で過ごし、2002年に東京大学教養学部に入学。卒業した2006年に日本貿易振興機構に入構し、海外調査部に所属。2010年に広島事務所に転勤し、2013年に大連事務所へ赴任した。

インタビューを終えて
両国側の感性と視野
 森さんとは、大連に赴任してきた当初からのお付き合いで、公私ともに席を同じにすることが多かった。しかし、今回のインタビューで高校時代は北京の現地校で学んだことを初めて知った。
 中国に溶け込んで思春期を送った森さん。外側から中国を見てきた私とは理解度が圧倒的に異なり、日中両国の側に立った深くて広い感性と視野は、今の日中関係に最も求められる要素なのかもしれない。日本貿易振興機構の仕事は、森さんの天職と言えるだろう。

猪瀬 和道

この投稿は 2015年5月12日 火曜日 2:05 AM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

コメントをどうぞ

掲載日: 2015-05-12
更新日: 2015-05-12
クチコミ数: 0
カテゴリ
エリア