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大連日本商工会理事長 日野 正章さん hino masaaki

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「激動の時代であるからこそ、流されずに商工会本来の目的を確認して、足元を固めることが大切だと考えます」

 大連日本商工会の理事長に、東芝大連有限公司副董事長・総経理の日野正章氏が就任した。中国の経済環境が変化し、日中関係も微妙な状況下にあり、大連日本商工会も従来とは異なった局面を迎えている。新理事長はこの状況をどのように捉え、乗り切ろうとしているのか、インタビューした。
 今年度の大連日本商工会の理事長に就任されました。まずは抱負をお聞かせください。

 大連の日本企業を取り巻く環境は大きく変わり、様々な課題を抱えています。激動の時代であるからこそ、流されずに商工会本来の目的を確認して、足元を固めることが大切だと考えます。そのためには、理事会などでの深い議論を通し、商工会としての行動ができればと思っています。

 環境の変化とは、具体的にどのようなことが挙げられるのでしょうか。

 大連日本商工会は30年以上の歴史がありますが、5、6年前までは労働集約型の企業活動が成り立っていました。しかし、労働集約型は東南アジアに移行しはじめ、中国ではより付加価値の高い事業が求められています。また、国際競争が激化する中で、大連に拠点を設ける意義を改めて明確にする必要があります。

 付加価値の高い事業とは、どのようなことでしょうか。

 世界の工場と言われた時代は、作って出荷していれば企業活動が成立していました。しかし、現在は為替の変動やコスト増など環境の変化もあり、それだけではビジネスが困難になってきました。中国をマーケットとして捉えることが価値を高め、拠点を設けることの意味を持つことだと思います。ただ、中国市場は特徴があり、簡単なことではありません。

 そこで商工会としての役割が求められるのでしょうね。

 そうです。地元政府と話し合いの場を積極的に設け、意見交換を通して会員企業の要望などを伝えることが大切になってきます。また、政府が何をやろうとしているのかを、会員企業が正しく理解して共有することも重要でしょうね。

 大連日本商工会は企業関係だけでなく、日本人会的な性格も持っていますが、その面ではどのようにお考えでしょうか。

 駐在員やその家族、日本関係者の親ぼくを深める役割も持っています。今の日中関係は微妙な問題を抱えているだけに、生活面では領事館(大連事務所)との緊密な連携が重要になってきます。情報を共有して日本人の安全を確保しなければなりません。そして経済面ではジェトロ大連との関係を深め、従来からの〝三位一体〟路線を堅持したいと思います。

 大きな課題のひとつに商工会の法人化がありますが。

 先日、地元政府に新任のあいさつにうかがった際、対外開放などの政策をお聞きしました。簡単ではないでしょうが、こうした大きな流れの中で、(政府の方針が)変わりつつあるな、との印象を受けました。この課題については先輩方が粘り強く取り組んでこられました。商工会活動の継続性を考えると、独立した組織が必要でしょう。

 他地区の日本商工会や米国、韓国商会との友好関係も深まってきましたね。

 中国各地に日本商工会が組織されていますが、中でも経済活動面で関係が深く、距離的にも近い瀋陽日本商工会などとの交流を進めて行きたいですね。また、米国、韓国は日本の重要な経済パートナーですので、この地で活動する企業家として友好関係を築くことは当然のことと考えています。

 最後に今後の会運営に対する意気込みをお聞かせください。

 激動の時代だけに、緊張感をもって理事長をお受けしました。しかし、大連での歴史ある会員企業が多いだけに、心強く思い、理事をはじめ会員のみなさんと協力して行きたいと思います。また、地域的にもまとまりやすく、親日的な土地柄だけに、恵まれた環境にも感謝しています。

【経歴】

 1957年、東京都足立区生まれ。武蔵工業大学(現在の東京都市大学)電気工学修了後、東芝に入社。東芝アメリカMRI社、東芝メディカルシステムズを経て、2012年7月に東芝大連有限公司の総経理として赴任した。

【取材を終えて】

多趣味な〝粋人〟
 東芝に入社以来、エンジニアとして歩み続けてきた。中でもMRIをはじめとする医療機器開発を手がけてきたメディカル部門のエキスパート。しかし、一途な技術者のイメージはなく、多趣味な〝粋人〟でもある。
 そのひとつが那須(栃木)工場の勤務時代に出合った渓流釣り。自ら毛針を作るほどのめり込み、自然とふれ合う釣りを楽しんだと言う。揺るぎない基本を持ち、一方では広い分野に通じる物腰の柔らかさを兼ね備える。激動の時代を乗り切るリーダータイプと感じた。
猪瀬 和道

この投稿は 2014年6月11日 水曜日 6:05 PM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

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掲載日: 2014-06-11
更新日: 2014-07-18
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