Whenever誌面コンテンツ

大連理工大学外国語学院日本語学科学科長 孟 慶栄さん meng qing ying

main

sub

「お互いを理解した上で初めて仲良くなれ、真の友情が芽生えてくることでしょう」

 中国の学校は間もなく新学年がスタートします。どのような教育方針で臨むのか、まずは抱負をお聞かせください。

 私たちの学科は日本語教育です。しかし、いまは日本語能力だけでは就職することは難しく、企業人としても通用しません。日本語に加えたプラス・ワンの能力が求められます。大連理工大学は理科系の素養を持っている学生が多いので、さらに理科系の能力を伸ばすため、パソコンや生物、物理、数学などを必須科目としています。また、経済や法律などの知識を身につけるプログラムも用意して、社会に求められる、社会に貢献できる人材を育てることを目指しています。

 卒業生の就職など進路の状況はいかがでしたか。

 今年の卒業生は約40人。日本をはじめ、欧米へ留学した学生、大学院に進んだ学生も数人います。あとは日系企業や日本とかかわりのある中国企業などに就職しました。世界的な日本企業には今年も2人が入社しました。これは理工大の学生に対する高い評価をいただいたもので、昨年に続いて「また来て欲しい」と求められたものです。私たち教師にとってもうれしいことです。

 理工大学生のレベルの高さは定評があります。今年のキヤノン杯日本語弁論大会では日本語専科部門で日本語学科の学生が優勝しましたね。

 もともと学生の能力が高いことと、学習成果の現れだと思っています。理工大の教育に対する評価にもつながり、素直に喜んでいます。私が自慢したいのは、こうした学生を育ててきた先生たちのレベルの高さです。日本語学科の教師は23人いますが、このうち8人は日本人。中国人の9人は日本の大学で博士号を取得した人、6人は日本の大学に在籍して日本の文化や習慣に精通した人たち。みなさんはとても優秀です。

 日本語学科ではどのような教育を通して学生を育てているのですか。

 知識の詰め込みではなく、それぞれの先生が学生の自主性を引き出す工夫をされています。また、社会実習や日本との交流にも力を入れています。ほとんどの学生が在籍中、日本の大学に短期、長期を含めて留学経験があります。座学の学問としてだけでなく、実体験を通して日本語を学び、日本の社会、文化、習慣を習得しているのです。

 日本の大学とも活発に交流をしていますね。

 提携している日本の大学は、横浜国立大学や金沢学院大学、北海道大学、東京工業大学など20校以上に及びます。大連理工大の学生が留学するだけでなく、日本の学生たちも留学生として受け入れています。若い学生同士の交流はとても有意義だと思います。

しかし、日本の学生は歴史を知らなすぎる、との指摘もあります。交流する上で意識のずれなどがあると思いますが、いかがでしょうか。

 確かに日本の学生たちは、旅順に連れて行っても、ここが日露戦争の激戦地であったことは知りませんし、日清戦争のことも知りません。中国の学生たちは小中学校などで近代史を学んでいますが、実感としての歴史観がありません。ある面では致し方ないのかも知れませんが……。

 最後に日中の学生たちに、どのようなことを望まれているのか、お聞かせください。

 日中関係は政治面で揺れ動くこともありますが、大切なのは歴史を学んで事実を知ることです。お互いを理解した上で初めて仲良くなれ、真の友情が芽生えてくることでしょう。取り立てて難しいことではありません。認め合えば素直に付き合うことができ、将来の展望が拓けて来ると思います。

【経歴】
 瀋陽出身。黒竜江大学日本語学科卒業、瀋陽工業大学で日本語教師として2年間勤務した後、北海道大学に留学。その後、中国語、日本語教師、通訳、翻訳などの仕事をして通算16年間、日本で暮らす。2002年に帰国して大連理工大学の日本語教師となり、2011年に日本語学科の学科長に就任した。

日中を知り尽くした理解者

 実は私も8年前、大連理工大学日本語学科の教師として教壇に立っていた。孟慶栄先生とはその時からの知り合いで、授業方法のアドバイスを受けるなど、随分とお世話になった。その時の印象は、まるで日本の女性と話しているような、物腰の柔らかさだった。
 日本での16年間の生活によって、日本の善悪を理解し、中国の長短もしっかりと認識する孟先生。日本の緻密さと中国の寛容の深さ−―両面を知り尽くした、両国の相互理解にかけがえのない人材だろう。日中の将来に希望を持てる若者の育成に期待したい。

この投稿は 2013年9月5日 木曜日 5:33 PM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

コメントをどうぞ

掲載日: 2013-09-05
更新日: 2013-10-15
クチコミ数: 0
カテゴリ
エリア