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大連剣道同好会 会長 李 鴻雁さん li hongyan

大連剣道同好会 会長 李 鴻雁さん li hongyan
李 鴻雁さん

「国籍や民族が違っても、私たちは地球に暮らす1つの家族です。剣道も竹刀と竹刀の勝負ではなく、心と心の交流です」

 2005年10月に設立し、現在は約400人の会員を有する「大連剣道同好会」。会員は、学生や会社員、政府の公務員など様々で、年齢も小さな子どもから年配まで幅広い。日々の稽古だけではなく、他都市や日本との交流など、剣道の普及に取り組んでいる。会長として同会を、さらには大連の剣道界を引っ張る李鴻雁さんに、剣道の魅力や文化交流の意義を聞いた。

 剣道を始めたきっかけは、何でしょうか。

 2003年、北京で剣道の道場を見学しました。激しい稽古、技の速さ、みなぎる気合い。剣道の持つ武道の雰囲気に触れ、興味がわき、習いたいと思いました。ですが、当時の大連に剣道道場はなく、剣道を始めたのは2005年になってからです。

 剣道で忘れられない思い出はありますか。

 剣道の稽古では、礼を重視します。礼には道場、先生、稽古仲間、竹刀や防具への礼が含まれます。お互いを尊重しあう心、と言えるかもしれません。忘れられないのは、剣道を始めたばかりのころ、北京での交流活動に参加した際のことです。稽古の後、私は高段者同士の稽古から学びたいと思い、疲れ果てていたため、竹刀の剣先を床につき、腰を曲げた悪い姿勢で先生方の稽古を見ていました。そうしたら、当時の北京日本人会剣道同好会会長の東倉雄三先生から厳しく注意されました。

 どの様な注意だったのでしょうか。

 私の姿勢や態度は、明らかに礼を欠いていました。礼を知らないのであれば、礼をしっかり学んでから道場に出てこいと、厳しくしかられました。私は恥ずかしくて、東倉先生の顔を見ることもできませんでした。ですがその夜、懇親会の時、東倉先生が優しく声をかけてくださり、礼について改めて教えてくださいました。礼の教えを聞き、涙がこみ上げてきました。

 剣道で最も大切なことは、やはり礼でしょうか。

 その通りです。東倉先生からは、「礼に始まり、礼に終わる」という言葉があるように、礼をしっかり学ばなければ、剣道の技術的な上達もないと教えられました。また、教士7段の東利美先生からは、礼を欠いてしまったら、剣道はただの暴力になると教わりました。全日本剣道連盟が謳っているように、剣道の理念は「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である」のです。

 ところで、中国の剣道人口はどんどん増えています。どんな理由が考えられますか。

 伝統文化やアニメ、漫画、礼儀正しさなど、日本の文化に関心を抱く人が増えているからだと思います。剣道人口の増加は嬉しいことですが、中国の剣士にも剣道の理念を正しく学んでほしいと思っています。剣道の魅力は、試合での激しいぶつかり合いや、勝ち負けだけではありません。他のスポーツは、勝って喜びますが、剣道では勝っても喜びません。勝利は、一過性のもので、最後の目的ではないのです。

 剣道は日本文化の1つで、中国では異文化です。異文化に親しむことや、異文化に触れることには、どの様な意義があるでしょうか。

 私たちは、地球に暮らす1つの家族です。国籍や民族が違っても、1つの家族なのです。別々の歴史をたどり、発展の過程も違いますから、それぞれが独特の文化を築いてきただけです。他者の文化に触れ、理解することは非常に重要で、このような態度を通し、相互理解や平和的な共存、相互扶助、共同発展が実現できると考えています。文化交流に政治や国境はありません。心と心の交流です。剣道も、竹刀と竹刀の勝負ではなく、心と心の交流が大切だと思っています。

 最後に、今後の目標を、お聞かせください。

 大連での剣道の普及に努め、剣道の魅力を多くの人に伝えていきたいと思っています。現在も、日本の先生方からは多大なご支援をいただいていますが、引き続きご指導をたまわり、正しい剣道の精神を広めていくのが目標です。

  2005年10月成立的[大连剑道同好会],现有约400名会员,致力于成员每日的练习和剑道的普及活动。这次我们向剑道3段的李鸿雁会长采访到了剑道的魅力和文化交流的意义。
  “像[以礼始,以礼终]这句话,剑道中礼节最重要。如果不注重礼,剑道练习将沦为暴力,反之,凭借练习则能完善人格之道。现在中国学习剑道的人在增加,但我认为学习剑道不是为了胜负,而是学习剑道带来的理念。我们作为同在地球生活的大家族的一员,文化交流很重要。通过对不同文化的理解和交流来达到共同发展。”

経歴
 1976年、大連市に生まれる。2005年から剣道を始め、現在は剣道3段。現職のかたわら、2009年から国際剣道連盟中国事務部大連認証培訓中心主任も務め、日々の稽古や剣道の普及に携わっている。剣道のほか、「正心館合気道」の大連道場長でもあり、合気道の初段も所持。居合の心得もあり、武道に精通。

インタビューを終えて
「礼」を感じる温かな人柄
 インタビューでも「礼」の重要性を語った李鴻雁さんだが、正に「礼」を有言実行している剣士だ。一挙手一投足から、その人柄が伝わってきた。
 座右の銘は「活人剣」だと教えてくれた。これは、家族や愛する人、平安、生命を守り、暴力ではない剣。「殺人刀」と対比される剣だ。
 李さんのような剣士が大連に増えれば、大連の剣道はどんどん発展し、勝敗にこだわるスポーツとしての剣道だけではなく、それを超えた「道」としての剣道も、大連で広まっていくだろう。
武井 克真

この投稿は 2015年1月13日 火曜日 5:43 PM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

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掲載日: 2015-01-13
更新日: 2015-12-18
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